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アフタ(aphtha)とは「日本消化器内視鏡学会用語集第3版」1)によれば「黄ないし白色斑でしばしば紅暈を伴う炎症性変化,粘膜表層の欠損を肉眼的に確認困難な場合がある」と定義されている.この表現によれば,紅暈を伴わないものもアフタと呼ぶことが可能になる.また「胃と腸用語事典」2)によれば「円形ないし卵円形の白苔を有する潰瘍で,その周囲を紅暈が取り囲む病変を指すが,消化器科領域のみならず,皮膚科,耳鼻科,婦人科など,様々な領域で用いられている用語である」と定義されており,また,アフタ様潰瘍(aphthoid ulcer)は「アフタと同義語」とされている.この定義によれば,紅暈を伴わないものはアフタとは言えなくなる.さらに他の論文などで,潰瘍まではいかない紅暈を伴う小さなびらんをアフタ様びらんと表現していることもしばしば見受けられる2)~4).このようにアフタの定義はいまだ明確ではなく,その指し示しているものが各人で異なる曖昧な表現である.明確な定義のために意見集約が必要であると考える2)4)が,本項ではアフタ,アフタ様潰瘍,アフタ様びらんはほぼ同じ病変を指し示すものとし,単なるびらんと区別するために紅暈を伴う小さな潰瘍もしくはびらんを“アフタ様病変”と定義して解説する.
アフタ様病変はほとんどすべての腸炎の初期病変として,もしくは単純に病勢が弱い段階で出現しうる2)~5).大腸ではCrohn病(Fig. 1a),潰瘍性大腸炎(Fig. 1b),感染性腸炎(Fig. 1c),薬剤性腸炎(Fig. 1d),腸管Behçet(Fig. 1e)・単純性潰瘍などの炎症性腸疾患のみならず血管炎や悪性リンパ腫,成人T細胞白血病などでも観察され,原因が判然としない場合はアフタ様大腸炎と診断する場合もある.よってアフタ様病変の形態観察のみで診断を下すことは困難である.
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