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輪状潰瘍(annular ulcer,circular ulcer)は腸管短軸方向に走行する潰瘍で,典型的な場合には全周性の病変である.幅が広くなると帯状潰瘍(girdle ulcer)と呼ばれる.潰瘍または瘢痕によって対称性の狭窄を来した場合は輪状狭窄と表現される.小腸・大腸でみられることが多く,この所見がみられる疾患としては腸結核,NSAID(nonsteroidal anti-inflammatory drug)起因性腸炎,非特異性多発性小腸潰瘍症(慢性出血性小腸潰瘍症),急性出血性直腸潰瘍が代表的であるが,Crohn病,虚血性大腸炎,虚血性小腸炎,放射線性腸炎,アメーバ性大腸炎などでもみられることがある1).
腸結核は右側結腸,回盲部,回腸に好発する.連続性のある輪状潰瘍よりは不整形小潰瘍が非連続的に輪状配列する場合が多く(Fig. 1),連続した潰瘍を形成する場合は幅が広い帯状潰瘍であることが多い(Fig. 2).未治療の段階でも周囲に小型の炎症性ポリープや萎縮瘢痕帯が併存することが多い.NSAID起因性腸炎でも輪状潰瘍がみられることがあり,大腸においては半月ひだ上(Fig. 3),小腸では輪状ひだ上に浅い潰瘍が形成される(Fig. 4).非特異性多発性小腸潰瘍症は慢性出血による貧血と低蛋白血症を来す疾患で回腸に浅い輪走,ないし斜走する潰瘍が多発する.虚血性大腸炎では縦走性の病変が有名であるが,半月ひだ上に紅暈を伴うびらんがみられることがある(Fig. 5).急性出血性直腸潰瘍は長期臥床中の患者で突然に無痛性の大量出血を来す疾患であり,歯状線近傍の下部直腸に限局して輪状,帯状潰瘍や輪状配列する類円形ないし不整形潰瘍が特徴的である.
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