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食道胃接合部(esophagogastric junction;EGJ)は,食道と胃の接合部を意味し,粘膜接合部と筋層構造上の接合部(移行部)から成り立っている.横隔膜の高さとほぼ一致するが,内視鏡による粘膜面からの観察,X線像や解剖学的な周囲臓器の位置関係からの観察により,それぞれ異なった部位を意味している可能性がある.臨床的には,内視鏡検査で観察される食道粘膜と胃粘膜の接合部,X線検査で観察される管状の食道が胃に入る解剖学的な接合部,外科手術時に観察される食道の内輪筋と胃の深部の厚い筋層との接合点の三者がEGJとしてが経験される.通常は内視鏡検査で粘膜面から食道胃接合部を観察することが多く,逆流性食道炎やBarrett食道の診断に重要な指標となる.EGJは組織学的にはSCJ(squamocolumnar junction)と呼ばれ,重層扁平上皮である食道粘膜と胃噴門部の腺上皮が一線を画して接しているが,逆流性食道炎や胃炎の食道への波及により,波形,時に火焔状を呈することがある.Barrett食道が生じると,本来のEGJと,食道側へ進展したBarrett粘膜と食道扁平上皮との接合部(SCJ)の2か所に接合部が生じる.
「食道癌取扱い規約」(2008年10版補訂版)1)では,EGJの同定は,内視鏡検査では食道下部柵状血管の下端,あるいは胃大彎の縦ひだの口側終末部,上部消化管造影検査ではHis角を水平に延長した線,あるいは胃のひだの口側終末部で行うと記述されている.欧米では,胃縦ひだの口側終末部がEGJとされているが,日本では2つの基準があり,症例によっては両者がずれることもある.萎縮性胃炎が進行すると胃体部の縦ひだは消失するので,この場合は,柵状血管の下端をEGJとすることが多い.柵状血管を正確に観察するには,胃内の空気を少なくし,被検者に十分に深吸気を行わせることが必要で,深鎮静により意思疎通が図れないときは困難である.大彎のひだ口側終末を基準とするときは,胃内を過伸展させるとひだは縮小あるいは消失するので,できるだけ胃内にスコープを挿入する前に観察する.
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