- 有料閲覧
- 文献概要
近年,胃X線検査の診断能は著しく向上してきたが,胃小区などを問題にすれば日常のX線フィルムに微細凹凸が忠実に表現されていない場合が少なくない.この原因として,まず胃粘膜表面を覆う胃粘液の存在をあげることができよう.そのため胃粘液の溶解,除去を目的として検査数日前あるいは検査直前に,各種消化酵素剤,酸中和剤,副交感神経遮断剤などを投与する方法が試みられているが一般化するには至っていない.われわれは色素内視鏡における前処置として蛋白分解酵素を用いた粘液除去法を考案し,ほぼ満足すべき状態まで被覆粘液を溶解・除去することに成功している.その結果,青色系色素の撒布によって通常内視鏡では観察不能な微細凹凸や胃小区像の観察が可能になった.この粘液除去法の原理を応用して胃小区像描出のためのX線検査法を諸種検討し,日常の臨床に応用可能な方法を案出したので,その方法と成績を紹介する.
色素内視鏡における前処置と同様に,胃粘液溶解剤として,各種消化酵素剤や蛋白分解酵素の中から強力な作用を示すPronaseを使用した.Pronaseは100P.u./ml以上の濃度で効率よく粘度を低下させる.至適pHは6~8であるが,鎮痙剤注射下に重曹1gを投与すれば,これのみで30分以上pH胃内をこの間に維持することができる.これらの事実に基き,粘液処理液が胃内全域に充分作用したのちに残液を回収する精密X線検査法(以下精検法)と残液を回収しない簡易法とを考案したが,今回は精検法について述べる.本法は下記のように施行する.
①ブスコパン1A静注(40歳以下は2A)
②温湯(30~40℃)300ml,Pronase 4万単位,重曹1gを経口投与.
③20分後ゾンデにて胃液吸引し,適当量空気送入
④ブスコパン2A静注後撮影開始
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.