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London大学Sherlock教授のDisease of the Liver and Biliary Systemが1968年に第4版としてでてから7年経って,ここに新しく第5版が発刊された.この本は肝・胆疾患に関する外国の書物の中で最も理解しやすく,かつ最も多くの人によって読まれているので,とくに書評することもないので,この第5版で新らしく取上げている事項について紹介する.
周知のようにこの7年間で肝研究において最も進展をみたのは肝炎ウイルス,とくにB型肝炎ウイルスに関するものである.すなわちB型肝炎ウイルスの指標となるHBs抗原一抗体系,HBc抗原一抗体系,さらにはe抗原一抗体系の検出が可能になり,しかもB型肝炎の発症には細胞性免疫の関与が重要であることが明らかになった.そしてB型肝炎ウイルスの感染による肝炎の転帰として慢性肝炎,肝硬変,肝癌が成立することも確実になった.この第5版では従来Hepatic cirrhosisの章に含めていたChronic hepatitisを新らしく章として,Chronic persistent hepatitis,Active chronic ‘Lupoid'(HB Ag negative)hepatitisおよびChronic liver disease with positive HB Agに分けて彼女ら一派の仮説を混ぜて論じている.そのほか新らしい章としてAcute(fulminant)Hepatic Failureを設け,その病態生理にっいてのべるとともにTemporary hepatic supportとして新らしくExtra-corporeal liver perfusionを加えているが,最近話題になっているCharcoal Haemoperfusionについて触れていないのが淋しい.しかし最終章では肝移植の現況と問題点について可成り詳細にのべ,この研究はもっと続けられねばならぬことを強調している.また肝・胆・膵疾患の診断におけるEPCGを含めたX線診断法の進歩の結果を各章で随所におり込んでいる,さらに胆汁の物理化学的性質と胆石形成における,bile salt,lecithin,およびcholesterolの3要素の関係を解説し,胆石溶解で話題になっているChenodeoxycholic acidの役割にっいても評価している.
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