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書評「食道静脈瘤の診かたと治療」
堀 原一
1
1筑波大学
pp.1080
発行日 1986年10月25日
Published Date 1986/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110172
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編集の出月康夫教授は,知る人ぞ知る東大第2外科法と言われる食道静脈瘤直達手術の創始者の1人である.昭和36年,インターンを終えて当時木本誠二教授が主宰しておられた東大第2外科に,大学院学生として医局に入った出月教授は,教室の1つの主テーマであった門脈圧充進症の食道静脈瘤による吐血の予防のための,新しい手術治療に取り組まれることになった.筆者も同研究グループの1人であったのだが,昭和25年前後からわが国で門脈圧亢進症の外科をテーマに掲げた先導的教室の1つとして,当時の木本外科は門脈減圧手術,ことに門脈下大静脈吻合術を行い,吐血からの救命は果たしたが,ときに術後脳症の合併に困っていた.そこへ米国のWalkerが経胸的食道離断術を提唱したが,単純離断による食道静脈瘤血流の遮断では高率に再発することから,若き出月教授はイヌによる実験研究を重ね,経胸経腹法による下部食道の広範な血行遮断と食道離断,胃上部の血行遮断と脾摘を合併施行する,今日いう東大第2外科法の基礎を作ったのである.
その後,各種の選択的門脈減圧手術のほか,最近では内視鏡的食道静脈瘤硬化療法も加わり,治療法の選択に幅が出てきたのが現状である.
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