特集 食品衛生
最近の食品衛生の諸問題
粟飯原 景昭
1
Kageaki AIBARA
1
1国立予防衛生研究所食品衛生部
pp.348-352
発行日 1981年5月15日
Published Date 1981/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206305
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■はじめに
食品衛生はライフサイエンス(生命科学)の一角に位置するものといえる,江上不二夫教授はライフサイエンスを「人間生活のための科学」ととらえ,その内容について次のように述べておられる.——第一段階(生物,生命一般の特性の理解),第二段階(その上に立った人間の生命の特性への認識),さらに第三段階として「それに基づいて人間が心地よい生活を営むための方途を探求する科学」と整理し,生命科学が当代の人間のみならず将来の人間にも思いをいたしたものである,と.
実社会と密接にかかわり,きわめて実学的性格の対応を常に要求されている食品衛生に何らかの定義を下すことは,基礎学問的にはあまり意味のないことかもしれない.しかしながら現実に食品衛生は,国際的にも国内的にも食品衛生法(呼称はそれぞれの国により多少異なる)によってその基本的性格はかなり明らかにされている.わが国に初めて近代的な食品衛生法が公布されたのは昭和22年12月24日(法律233)であるが,その第1章第1条に「この法律は,飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し,公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的とする」と記されている.
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