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この数年来,特に早期胃癌の診断学が著しい進歩をみせ,各地から数多くの症例が発表されてきている.このことは,レ線診断法の進歩とあいまって胃内視鏡検査の普及と発展が大きく貢献しているものと考えられる.
われわれの病院では約3年間で100例の早期癌を発見したが,その3年間における発見の推移をみると第1表に示めすごとく第1年目に28名,第2年目に30名,第3年目に42名と,年をおうごとに,その発見数が増加してきている.これは診断学の向上を意味しているものと思う.たしかに以前には見すごしていたような,わづかな病変にまで注意をはらうようになり,かすかな隆起,陥凹,変色をもとらえ,術前,生検によって確証するようになってきた.一方また良性病変を悪性と誤診して手術をするといった症例も少なくなってきた.
こうした進歩はレントゲン,胃内視鏡,細胞診の三つの柱に外科,病理といった胃グループの協力のたまものと思う.さらに小さな病変,高位の病変の発見に,今後の研究発展が期待されるところである.
早期胃癌の肉眼的分類は第四回日本内視鏡学会総会の宿題報告として田坂会長が早期胃癌の全国集計を代表発表されて以来各方面で採用され,その面での研究はわが国の独走といった現況である*1.早期癌の規準は癌浸潤が粘膜内および粘膜下層部にとどまるものと規定しており,これを隆起型(Ⅰ型)表面型(Ⅱ型)陥凹型(Ⅲ型)に分類し,表面型をさらに表面隆起型(Ⅱa)表面平坦型(Ⅱb)表面陥凹型(Ⅱc)に分類している.ⅡcとⅢ,ⅡaとⅠの区別はその深さ高さが粘膜層にとどまるか否かによっており,同一病巣に隆起陥凹が混在する場合,主病変を先にしてⅡc+Ⅲ,Ⅲ+Ⅱcという具合に表現している.この早期癌分類によるとわれわれの病院ではⅡc型がもっとも多く約54%で副病変を含めると73%にも達する.リンパ節転移は原則としてないものと定義しているが,良性と思って手術したところ早期癌であったなどという症例は転移の有無が不明であるのでわれわれは転移をみとめたものをも含めて早期癌となし,将来の治癒率の問題を論ずる場合の参考にしようと考えている.120例の早期癌をみてみると浸達度1度(粘膜層のみのもの)のもの47例中転移のみとめたもの4例,浸達度Ⅱ度(粘膜下層までのもの)のものでは67例中転移のあったものは17例,検索しないもの6例であった.
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