初心者講座 大腸検査法・序
本講座を始めるに当たって
武藤 徹一郎
1
Tetsuichiro Muto
1
1東京大学医学部第1外科
pp.110-111
発行日 1987年1月25日
Published Date 1987/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111962
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1年間の連続講座として,本号から大腸検査法が取り上げられることになった.胃検査法の場合と同様に,主として初心者を対象にした企画であり,実地に役立つよう実際的な立場から各検査の要点,コツを要領よくまとめてもちうように配慮したつもりである.1回ごとに日常診療に役立つ検査のコツが理解されるに違いない.
ところで,最近の大腸疾患の増加ぶりは著しいものがある.その中でも注目されているのは大腸癌の増加であり,厚生省の死亡統計によれば過去30年間に約3倍も増加している.ということは,実際の大腸癌罹患率の増加はそれ以上であることを意味している.統計には表れてこないが,大腸癌増加の背景にはポリープ(腺腫)の著しい増加があるはずであり,そのほかに様々な炎症性疾患,憩室症などの増加もあることは間違いない.更に単純性潰瘍,孤立性直腸潰瘍,angiodysplasiaなど,従来は臨床的にほとんど問題にされることのなかった疾患が,決してまれならず存在することもわかってきた.要するに大腸に発生する疾患は多種多様であり,癌の診断がその大部分を占める食道・胃とは異なって,その対象となる疾患が著しく幅広いことを,まず第1に認識しておく必要があると思われる.
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