けんさアラカルト
「すこやか文庫」—入院患者に本の貸し出しを始めて
松井 美保子
1
1青森市民病院臨床病理部
pp.1040
発行日 1991年11月1日
Published Date 1991/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900864
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はじめに
書物が人の心に影響を与え,時として治療効果をもたらすことに人類は古くから気づいていた.2世紀には小アジアの古都パーガモンに患者用図書館があったという.しかし,病院図書館が設立されるようになったのは18世紀に入ってからのことである.病院図書館の先進国であるアメリカ,イギリスを除く各国では20世紀になってからようやく活動が始まったといってよい.読書の治療効果はまず宗教と結びついて認識された.病院図書館の蔵書は宗教書から道徳書,そして一般書へとその幅を広げていった.日本では1950年,医療専門雑誌『病院』に患者用図書館の必要性を訴えた論文が初めて掲載された.1962年,名古屋市立大学医学部附属病院でボランティアによる図書室での本の貸し出しが始められたが,ボランティア活動のひとつとして紹介されただけで患者用図書館の価値と意義の言及まではいかなかった.1974年に患者用図書館の全国実態調査が日本で初めて実施され,1977年,朝日新聞に患者用図書館のテーマが取り上げられ,この種のサービスの価値と必要性が一般国民,医療関係者の知るところとなった.
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