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消化器内視鏡学の歴史は長く,時代の変遷と共に幾つかの新機軸を経て今日に至っている.第1期はレンズ光学系を用いた上部消化管を中心とした内視鏡の時代で,1世紀以上にわたったが研究の域を脱しえず,少数の熟練者によって支えられてきた.第2期は日本における胃カメラ時代である.この期間は約10年強にすぎないが,内視鏡学の歴史の中で華々しく開花し,診断学への顕著な功績,各疾患に対する形態学的研究に資したことは万人の認めるところである.第3期はHirschowitzによるfiberopticsの開発に始まるファイバースコープの画期的進歩であり,今日の内視鏡学が確立された.ほぼ完成されたファイバースコープは当然のことながら,全消化管,腹腔鏡をはじめ消化器領域以外の内視鏡学にも応用され,内視鏡学に終止符が打たれた感があった.しかし,この精巧緻密なスコープですら小腸の診断に関しては最大の努力にもかかわらず,いまだ完成された機種,手技は必ずしも得られていない.
1984年,米国Welch-Allyn社から全く新しいスコープが提出された.このスコープは先端に小型のTVカメラを装着したもので,従来のimage fiberに代わって画像をモニターに描出する機構である.ここに内視鏡学の歴史の中で画期的第4期を迎えたわけである.このことを耳にしたとき頭をかすめたことは,まず第1に内視鏡の暗黒大陸であった小腸鏡の可能性と,ちょうどこのころ,教室で画像解析による胃上皮細胞内粘液の測定を行っていたことに関連して,このスコープを用いれば画像のコンピューター処理ができるのではないかということであった.実際,既に幾つかの画像解析による境界強調に関する研究が報告されている.しかし,Welch-Allyn社のスコープ,その後日本で開発されたオリンパス社製,東芝・町田社製,富士光学社製の電子スコープのわずかな使用経験を通して,小腸鏡への応用はまだまだ夢の段階であることに気付いた.
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