Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
家族性大腸ポリポージスは,大腸のびまん性の無数の腺腫,高率の悪性化,遺伝的疾患で注目され,Gardnerら(1951)は大腸ポリポージスのほかに,消化管外腫瘍性随伴病変の多発する家系を詳報し,後にGardner症候群と呼ばれてきた.両者が遺伝学的に異る疾患であるか,または同一系に属する疾患であるかは,論議ある点である.われわれは家族性大腸ポリポージスの1例を発端に,その家系を追跡し,さらに2例の直腸癌を伴った大腸ポリポージスを発見した.うち1例はGardner症候群に属すると考えられるが,胃にも多発性扁平隆起を認め,組織学的にはATPで,長径2.5cmのものは特に強い異型度を示した.ここに1家系3症例を報告する.
〔症例1〕S. A. 38歳男.会社員.発端者.母,叔母共に直腸癌で死亡(図1).これまでに著患はないが,約1年前から便が細い.48.5.1某医で結腸病変を指摘され,48.5.7当科に入院した.入院時,体格中等,体重50kg,体幹四肢に著変を認めない.口腔粘膜に色素沈着を認めた.軽度貧血が認められた.バリウム注腸検査では,全大腸に小豆~大豆大の隆起が認められ(非密生型),S字状結腸には鶏卵大の有茎性腫瘤が認められる(図2).胃,小腸,全身骨のX線検査では,変化を認めない.48.6.8家族性大腸ポリポージスの診断で,結腸亜全摘,盲腸直腸吻合術を施行した,摘出標本では,粘膜面に米粒大より大豆大の大きさの無茎・有茎の多数のポリープが認められる(約700個).S字状結腸では疎で,そのうち1個は60×4.0×2.0cmの表面細顆粒性巨大有茎性ポリープであった(図3).病理組織学的には,検索したポリープはすべて腺腫性ポリープであった.巨大ポリープの一部に異型性の強い部が認められた(図4).48.7.18術後40日目に退院した.排便回数1~3回/日,体重56kgとなり,復職した.術後10カ月目の現在健在である.
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.