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Plummer-Vinson(Patterson-Kellyともいう)症候群では,食道上部にwebが存在し,嚥下困難の原因になることはよく知られている.これとよく似たweb様のものが,食道下部にも発生し,嚥下困難の原因となる.中でも著名なのは“Schatzki ring”である.1953年Schatzkiによって記載されたので,彼の名を冠して呼ばれている.通常横隔膜の4~5cm上に位置し,固定されている.このRlngの直径如何が嚥下困難の有無を決定する.Schatzkiによれば,13mm以下の場合症状が発現し,25mm以上の際は無症状で,13~25mmの場合は,食物の種類,形により症状があったり,なかったりする.大きな肉片を食べた後におこるのを“Steakhouse症候群”と呼んでいる.ルチンの食道造影でどの位の頻度にみつかるか? Kramerは,症状のない100人の食道造影で,6人にSchatzkiのRingを発見したというが,私共の日常臨床では,極めてめずらしい.診断は,自覚症状,食道X線検査,内視鏡検査等により大して困難ではない.写真は自験例を示す.レントゲン(図1)ではRingによるスムーズなくびれが,対称性に両側から入っているのがみられる.描出には下部食道を十分伸展させることが必要だ.内視鏡診断は,従来の硬性食道鏡では難かしかったが,ファイバースコープによれば(図2),Ring近傍の上下を空気で適当にふくらますことが可能で,全周性の輪状の粘膜突出がみられ,スコープの挿入によるも,この部位の径は固定不変で,開閉運動がおこらない.
このRingは,組織学的に一体何物であろうか.Mac-Mahonらの報告では,このRingの上半をおおう粘膜は,食道の扁平上皮で,下半には胃の腺上皮を認めている.固有筋層の肥厚はなく,粘膜筋板の肥厚と粘膜下組織での結合織の増殖がみられた.自験例でも,このRingの下方からの生検で,胃粘膜を,上方から食道上皮を得た.つまりRingは,食道胃粘膜接合部にある.レントゲン所見では,Ringがあれば,そこにはHiatus herniaの存在を意味する.
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