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先程太田先生や今井先生が出されたスライドを拝見すると,潰瘍が先か後か結論が出しにくいものが少なくないと思うが,今井先生の場合には,組織標本のシェーマの色で書かれた粘膜癌の部分がかなり広いわりに潰瘍が浅く,小さいものが多かったように思うし,太田先生の場合は瘢痕もありましたけれども粘膜癌の病巣は比較的小さいものが多かったという印象をうけた.
さて早期胃癌の肉眼分類,内視鏡分類のⅢ型は粘膜癌病巣の大きさやひろがりや形はともあれ,その病巣中に潰瘍をもっていることが特徴であるといってよかろうと思う.この分類の基準は概念的には非常に明快であるが実際の症例によっては必ずしもそうでないものがまれならずある.特に潰瘍が浅く,その境界が不鮮明な場合にはわれわれがそれを肉眼で見てⅢ型に入れるべきか,あるいはⅡcに分類した方がよいのかということで,多少主観の入る余地は残るように思う.私自身はこの内視鏡分類が,肉眼所見を基盤にするものでその申し合わせにもあるように組織発生的な解釈を含むべきでないという主旨から,潰瘍の大きさ,深さ,古さは,ともあれ癌病巣中に,あるいは粘膜癌病巣に接して肉眼的に明瞭な潰瘍が認められたものは,すべてⅢ型に分類してきている.一番初めに太田先生が出された表の中,潰瘍癌の頻度が高く,全早期胃癌の約70%も占めていたという私の数字は,今申し上げたような基準で分類した結果である.しかし俗に「たむし」と言われているような,粘膜癌病巣が広くひろがっているⅡc型には,その病巣中に症例によっては浅い潰瘍を有しているものが少なくなく,そういう例では肉眼的に見てこれを潰瘍とすべきかあるいはエロージオンとすべきか判断に迷うことがあるが,それらは臨床的に検出し得る消化性の潰瘍とは実際にかなりかけ離れており,組織学的な判断を考慮に入れるとⅢ型に分類すべきかもしれないが,肉眼所見をより重要視して,Ⅱc型とし,後で述べるⅡcⅢ型とは一応区別している.
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