今月の主題 大腸・直腸
症例
大量の下血を主訴とした多発性大腸憩室症の2例
野村 益世
1
,
平林 久繁
1
,
木山 保
2
,
野坂 謙二
3
1関東中央病院内科
2関東中央病院外科
3関東中央病院病理
pp.321-324
発行日 1968年3月25日
Published Date 1968/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110687
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Ⅰ.まえがき
大腸の憩室は欧米においては,きわめて多い疾患であり,5~25%にみられるといわれている1).これに反し本邦では,従来きわめてまれな疾患とされていた.しかも本邦報告例の多くは急性虫垂炎と誤診して手術を行なった盲腸ないし上行結腸の憩室炎であり2)3)4)5)6),多発性の大腸憩室症の存在に注目されるようになったのはごく最近のことである7)~22)27).
大腸憩室症の合併症として,急性憩室炎・膿瘍形成・穿孔などのほかに欧米では下血が問題にされている.これに対し本邦では下血を強調した報告はきわめてまれであり,出血を主訴とした多発性大腸憩室症手術例の報告はまだ見当らない.
最近われわれは大量の出血を反覆し,X線検査により術前に診断し,手術により治療せしめた大腸の多発性憩室症の1例,および内科的に治療した大出血例の1例を経験したので報告する.
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