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Ⅰ.はじめに
手術胃の検査には,従来からレ線検査が主として行なわれているが,造影剤の通過が速く,しかも手術による変形,その他吻合口附近に生ずる痙攣や浮腫のため,種々の撮影方法を駆使しても内腔の状態を把握するのが困難なことが多い.したがって術後の消化性潰瘍のレ線診断は非切除胃における潰瘍にくらべると著しく劣っている.
一方内視鏡検査の応用については,SchindIerが1932年に軟式胃鏡を用いて詳細に研究をして以来,本邦でも昭和8年より近藤,常岡博士を初めとする在京内視鏡学者等の報告がある.しかし胃鏡は挿入が困難で,又患者に与える苦痛も大きいのでその後操作の容易な吾国独特の胃カメラが出現した.更にファイバースコープを基点とした各種内視鏡の改良や開発はめざましく,その病態に応じた多種類の内視鏡をうまく選択し,組合せて行なう時代へと進歩して来た.
しかしながら,術後胃に対する胃カメラ検査は盲検であるため残存胃の送気量を加減する事がむずかしく,満足な写真撮影を行なえない場合が多い.したがっていままでは吻合口又は残胃内腔の大きさ等を考慮にいれて各型のカメラを駆使し,ある程度鮮明な像が得られてはいるが,直視下でないということが最大の欠点となり充分な撮影を行なうのは仲々困難で,特にBillroth Ⅱ法の場合にはその傾向が強い.それというのも吻合部の多くがカメラの撮影上難点とされている胃体部大彎近くに存在するためと,吻合部が残胃の僅かの動きに対しても近位の切除断端の後方にかくれてしまうため,カメラの視野内に捕えることが困難であるからである.以上より従来胃カメラによる吻合部の撮影は,Ⅴa型を除いて成績は芳しくないといわれている.
ところが,最近ファイバーガストロスコープが開発されてからは,牧野,綿貫,前田,春日井等の報告にもある如く,町田製FGSやオリンパス製GTFおよびアングル付GFSは切除胃に対しては胃カメラに代ってRoutinetestであるといわれるようになってきた.すなわち直視下に観察しながらスコープの方向,体位の変換および空気量の調節などを行ないつつ撮影出来るので,先にのべた欠点が除去されたためである.
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