技術解説
私の胃カメラ検査
河村 虎太郎
1
1広島市 河村病院
pp.1221-1222
発行日 1967年9月25日
Published Date 1967/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110528
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自分が情熱をかけたものには,常に鮮烈な印象と懐しい憶い出が残るものである.私には,神経の働作電流という言葉は夜更けた生理学教室の空気と嗅いを,ショパンのピアノ曲は25歳の若い日を,Ⅱ型胃カメラは実地医家として胃疾患診断にかけた情熱を,鮮かに憶い起させてくれる.12年前,広島から度々通った東大田坂内科第八研究室の雰囲気,諸先生方の印象は,いつまでも私の心に懐しい憶い出となって残っているのである.
長年,実地医家として小病院で胃カメラ検査をやっていると,大学,大病院でのカメラ撮影法を実地医家向きに工夫しなければならないと痛感させられる.患者は大学,癌センターという医学の権威の前には信仰に近い事大思想を持っているから,そこでは心身共に誠に従順であって,例え少々辛い目に合わされても余り苦痛を覚えないらしい.ところが権威を背景に持たない実地医家に対してはたちまちにして忍耐力の薄い人間と化し,苦しい苦しいと訴えて揚句の果ては自分の事大思想を棚にあげ,胃カメラ等は二度とやらないと言いふらす始末である.
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