技術解説
私の病理診断
長与 健夫
1
1愛知がんセンター研究所第一病理部
pp.1579-1587
発行日 1967年12月25日
Published Date 1967/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403110442
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Ⅰ.はじめに
X線,内視鏡,細胞診,生検などによる診断が進んで胃粘膜の軽微な変化をも検出することが可能になった今日,臨床上もっとも問題になるのはそのような方法を駆使して得られた組織標本の読みの問題であろう.いかに進んだ精細な方法をもって得られた切除標本でも,最終診断である組織診が動揺したり間違っていたのでは折角の努力も十分に活かされない結果に終ることは自明の理である.
一昨年秋の第24回癌学会総会のシンポジウムの一つに「良性悪性境界領域」が今井環会長の発案で取り上げられこのシンポジウムの司会者である太田邦夫教授から胃粘膜のこの面について話すよう指名をうけた時,正直の所,煮つまった意見をもっていなかったし,また余り時間の余裕もなかったので随分と迷った.しかし「異型上皮巣」として確診を保留していた症例が相当数あり,上に述べたようなことからもっと系統的に調べねばならないと前々から考えていた時期でもあったので,学校の先生から宿題を貰った積りでどこまでこの問題に肉迫できるかやってみようとお引受けしたのが本文の内容と取り組むに至った動機である.
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