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良性と悪性の境界領域にあると思われる病変は,胃においては粘膜が限局性,広基性の隆起を示すものについて約10年ほど前から論議がよびおこされるようになった,このような病変が最近になって発生するようになったとは考え難く,X線や内視鏡等の診断の進歩によってはじめて認識されるようになってきたとみてよいであろう.それはさておき,このような病変が重要視される理由はそれが前癌性の性格をもったものであるか否かの判定が難しい点にあるが,肉眼的に広基性の粘膜隆起を示す多くの切除胃例中から組織学的に,一方では上皮の増生(Hyperplasia)とみるべき変化を示すもの,他方では表面隆起型の早期癌と診断すべき所見を有するものが鑑別されて,そのいずれとも判断しかねるが,さりとて腺腫(Adenoma)のカテゴリーにも入れ難いもののあることからすなわち除外診断法によって境界領域病変という概念が生じた.
このように“境界領域病変”とは概念的な呼び名であるが,隆起性の胃粘膜においてこのような変化を示すものに対しては,従来異型上皮病変(Atypical epithelium:ATP)とか異型上皮という表現が多く用いられ,“ATP”とはこのような組織像を示す粘膜隆起の略称ともなった感があるが,本来「異型」とは正常な母細胞や母組織からの像の距たり(deviation,Abweichung)を示す用語で種々の臓器組織細胞にみられる現象であるので,このような使い方はあくまで日常用語の略称にとどめるべきで正確な表現とは言い難い.さらに重要なことは,胃粘膜における異型上皮の出現は隆起型の病変のみに限られるものではなく,後述するように陥凹型のものにもみられることがあるので,日常用語の略称としても“隆起型ATP”とか“陥凹型ATP”という呼び方のほうがふさわしいように思う.ともかく異型上皮は凹凸いずれの粘膜病変においても出現しうることをまず指摘しておきたい.
As borderline changes of the gastric mucosa, histological features of the elevated and excavated lesions covered by atypical foveolar epithelia were described. Most of the excavated lesions were regenerating foci composed of metaplastic epithelia but some of them were covered by atypical epithelia equivalent to those of Group Ⅲ. From histological structures, they were considered to be in non-reversible and stable-state conditions.
Histological findings suggested that, in both elevated and excavated lesions, atypical foveolar epithelia were due to dysplasia of the affected mucosa.
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