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書評「今日の診断指針」
阿部 正和
1
1東京慈恵会医科大学
pp.902
発行日 1985年8月25日
Published Date 1985/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109842
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本書は,診断といわれるものの中で,鑑別診断を主にした本である.日常診療で最も重要なことは,できるだけ早く正しい病態の把握を行い,妥当な病名をつけ,それに基づいて適切な治療を実施することである.このたび刊行された「今日の診断指針」は,診断という点でその目的を余すところなく達成している.診察机の上に,「今日の治療指針」と「今日の診断指針」の2冊を並べて,時に応じて両書を繙けば,臨床医としては,正に鬼に金棒となるであろう.この意味において,今回の本書の刊行は極めて意義深いことであり,待望の書出現という感が深い.心からお祝い申し上げたい.
本書は症候編と疾患編から構成されている.ここでいう症候は,私自身の解釈では症状,つまり自覚的な症候と他覚的な徴候の両者を合わせたものになっている.しかし,それはどうでもよいことかもしれない.私たちが最初に遭遇するのは病名ではなく,症状であるから.本書が最初に症候編として434頁も費やしていることは頷けるところである.そこには全身症候47項目,各系統の症候111項目が取り上げられている.そして,プライマリ・ケアの立場を十分に念頭に置き,項目によっては救急処置まで解説されている.しかも,各項目について,どうしても診断がつかないときはどうすればよいのか,という説明まで述べられており,心にくいばかりの配慮である.更にまた,超音波画像,CTスキャンの像など,画像診断にもかなりの重点が置かれていることがよくわかる.
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