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編集後記
常岡 健二
pp.520
発行日 1972年4月25日
Published Date 1972/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109094
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早期胃癌肉眼分類起草10年を記念しての特集号である.このさい,この分類の功罪を改めて検討することは意義深いものと考える.もともとこの分類が肉眼的形態を主としたものであるだけに,病理組織学的関連において,胃癌発生の因果律において,また胃癌の進展過程において,さらにもっと都合の悪いことに“早期”という定義に関係して,種々不満な点を抱えているということもやむをえないといえよう.臨床的にみれば,その存在の疑わしい,ポリープ癌(Ⅰ型)と潰瘍癌(Ⅲ型)を両極においての分類にすでに無理があり,さらにⅡc病変に加わる潰瘍(Ⅲ)の消長が明らかにされ,その極限の状態としてはじめて純粋Ⅲ型を理解するしかないともいえるに至ったとすれば,Ⅲ型の独立性はもはや否定的といわざるをえない.しかし,一方の大きな利点としては,肉眼的分類であり,記号的表示であるだけに,臨床的診断には大変に有用であることである.現在凹凸病変として表現しうるものについては,X線検査であれ内視鏡検査であれ,肉眼的病変をよく整理しうれば,他疾患との区別はほとんどすべてに可能であり,さらに生検を併用すればまず完壁な診断が下せるといってよい.今後の問題は恐らく胃癌の出発点とみられるⅡb病変の発見と診断であり,その可能なことも近いとみている.この分類について今更変更の必要もないが,記号式表示については若干の修正を加える必要があるものと考えている.
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