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早期胃癌肉眼分類雑感
並木 正義
1
1北海道大学・第3内科
pp.489
発行日 1972年4月25日
Published Date 1972/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403109091
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早期胃癌の肉眼分類が示されてからすでに10年をへた.今日この分類に対する意見や反省がいろいろいわれているが,ともかくこの分類が世にでたことによって,早期胃癌への関心が高まり,胃癌の診断技術が向上し,多くの人が救われたことの意義はきわめて大きい.
ところで,この分類が,あくまでも肉眼分類であることを,ともすると忘れてしまう傾向がある.ここに混乱をひき起こす大きな理由がある.それは胃癌の予後にも関連して,深達度という病理組織学的レベルのはなしが肉眼分類の論議のなかに入ってくるために当然生ずる混乱である.病理の専門家をまじえての早期胃癌の研究会で鍛えられた臨床家達は,この分類の当初の定めである肉眼分類から,いつしか病理組織学的所見までもよみとろう(当てよう)と苦労し,あげくのはてに,つい迷いに入ってしまうわけである.しかしこれが肉眼分類であることを常に原点に立って認識し,肉眼判定の限界をよくわきまえ,わりきってことにあたるなら,それなどの矛盾は感じないであろうしひとつの共通の定めとして今後とも残されてよい立派な分類であると思う.分類の各型についての問題点をいちいち述べる余裕はないが,たとえばⅡc+Ⅲなどは,Ⅲの因子の消長による表現上の考慮をはらう必要があろう.また厳密な意味でのⅢ型は,きわめて稀であるかもしれないが,やはり分類としては残しておきたい気がする.
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