Japanese
English
今月の主題 食道癌の発育進展―逆追跡症例を中心に
序説
食道癌の発育進展―逆追跡症例を中心に
Introduction
牛尾 恭輔
1
Kyosuke Ushio
1
1国立がんセンター放射線診断部
pp.1185-1186
発行日 1988年11月25日
Published Date 1988/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108735
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- サイト内被引用 Cited by
食道癌の発育進展に関しては,1980年の第28回食道疾患研究会(白壁彦夫当番世話人)で“Retrospectiveにみた食道癌の経過”が主題として取り上げられた.次いで5年後の第38回食道疾患研究会(竹本忠良当番世話人)でも,“食道癌のNatural history”が主題となり多くの研究発表がなされた.だが雑誌の特集または単行本として,食道癌の発育進展が取り上げられたことはない.そこには食道における早期癌と表在癌の定義がこれでよいか否かという問題があり,また食道癌の発育進展が速いことは自明だ,という漠然とした認識が背景にあったように思える.
本誌「胃と腸」でも胃癌,大腸癌,胆囊癌の発育進展に関する特集号は既に組まれている.だが食道癌の発育進展については,これまで避けられてきたきらいがある.一方,臨床医の間でも,胃や大腸の早期癌の診断に比べて,食道癌では安易に考え,自己満足とあきらめの気持が漫然とあったことは否めない.すなわち,①「食道癌を早期に発見することは困難なので,胃と大腸のようにsm癌の状態で発見すれば,それだけで意義がある.(自己満足)」,②「食道癌は発育と進展が速く,胃のスキルスみたいなものだ.これまでretrospectiveにみても,ほんのわずかな所見しかないのに,1年以内に狭窄を呈する進行癌になっている例が多い.ゆえに早期の状態で見つかるのは偶然で,まれである.(あきらめ)」の2つが臨床医にあったことは否定できない.
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.