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書評「腹部単純X線診断 第3版」
中田 肇
1
1産業医科大学
pp.410
発行日 1988年4月25日
Published Date 1988/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108033
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コンピューター断層(CT)の導人は従来のX線診断学を一変させた感があり,放射線診断学の進歩を大いに促した.以前は,種々の造影検査なしでは観察が困難であった腹部臓器の多くが,容易にしかも直截的に描出されるようになった.その反面,最も経済的な,場合によっては極めて重要な情報を提供しうる古典的な腹部単純X線フィルムによる診断の習得が現在ではいささか軽視されている傾向もある.しかし,腹部単純X線フィルムに現れる微細な所見から,手術などの処置を必要とする重篤な疾患の存在を読み取り診断することも非常に大切であるのは論を待たない.
本書は永井,西岡両教授が長年の経験を生かして解説した腹部単純X線診断の書である.X線写真撮影法,X線解剖,正常像,異常像,読影に役立つレントゲンサインの章に分けて記述されている.解説文は簡明でしかも十分意がつくされており,症例の写真およびシェーマも適切である.これだけの腹部単純X線診断の良い症例を集めることは困難なことであるが,これを可能にしたのは著者の日頃の努力の結果であり敬服に値する.単純X線所見の理解を助けるためにCTなどの所見が随所に加えられているのも親切である.
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