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肝生検は従来,非協力的な患者,腹水,うっ血性心不全,慢性の肝うっ血,肝腫瘍,アミロイドーシス,胆管炎,肝外性胆道閉塞等の患者では禁忌と考えられてきた.その理由は,これらの場合,不幸な合併症が時にあったからだが,最近は1,000に及ぶ連続生検のシリーズでも合併症を認めていない,そこで著者は,肝悪性腫瘍の発見は,肝生検の主なる適応の1つで,もっとも重要な役割であることを強調している.ほとんどの合併症の報告は,Vim-Silverman針の時代におこったもので,Menghiniテクニックになってから死亡率は10分の1に減っている.この方法では,もはや肝悪性腫瘍は禁忌と考えられていない.他の方法で確診がつかない腫瘍塊があったり,肝スキャンで欠損のある場合,その組織学的証明が極めて重要ならばやらざるをえまい.著者の経験では,急性ウイルス性肝炎はいやな対象である.3,000例の肝生検中2例の死亡を経験しているが,いずれも急性肝炎で生検後大出血がおこった.いずれもVim-Silverman針の頃の出来事である.凝固系の異常や血管腫のある場合危険率が高いのは当然だが,腹水患者,ヘモクロマトージス,アミロイドーシス,うっ血肝などの場合,あまり危険と思われない.非協力的な患者でも,Menghini法では,針が肝内に約0.1秒あればよいので禁忌とはいえない.著者らは,30人の肝外閉塞の患者で生検をやったが死亡例はなく,合併症としては胆汁性腹膜炎と細菌血症を各1人に認めた.しかし,すべての肝外閉塞例にやれというのではない.確診が必要なときにのみ行なうべきだ.問題の核心を外科医に示す方法として,PTCまたはERCP等の確定診断法を先行すべきだろう.Roschらは最近,経頸静脈肝生検法が,肝外閉塞患者で安全に行なわれることを示した,この方法は,長い屈曲性の生検針をカテーテルに入れ,内頸静脈,上大静脈,右心房,下大静脈経由で肝静脈に入れ,静脈壁をつきぬいて吸引生検を行なう.出血しても血流に入るし,胆汁性腹膜炎をさけることができる,ユニークな方法である.以上の如く,肝生検は貴重な方法であり,その欠点を十分知った上で,長所を十分に利用すべきである.得られるインフォメーションと合併症等の危険とをバランスにかけて適応が決る.閉塞性黄疸で行なうときは外科医と共に手術室でやるのがよい.
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