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書評「標準外科学」
村上 忠重
1
1東京医科歯科大学
pp.1029
発行日 1976年8月25日
Published Date 1976/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107385
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たとえ,国家試験を受けるまでの学生達のための教科書とは言え,外科総論と各論を500余頁の中にひとまとめにしたうえ,脳神経外科,小児外科,老人外科まで,あまねく包含し,さらに,一般外科の中にも疫学や臓器移植など,きわめて最新の分野まで盛りこんだ手際は全く見事である.しかも,それぞれの分野の知識がすべて安心して信用出来,憶え込んで損がない.どうしてこんな離れ技が出来たかを考えてみると,新進気鋭の15人の侍大将達が自信をもって分担されたからという一語に尽きる.29年卒クラスに優秀な人物が揃っていることは承知していたが,外科学に限っても,あらゆる分野の専門家が揃っていて,お互がカバーしあっていることが如実に証明されたことになる.卒業後20数年,一番油ののりきったその15人が一つの目的に結集したところが何とも言えずよい.
これまでの教科書の多くは,一つの教室ないしは学派の中で分担され,中には専門でない人も一部執筆を受け持たされるという憾みがあった.ところが,学派を超越して書かれたこの教科書にはそれがない.全部が専門家の筆になる.したがって無駄がなく,しかも最初の行からコンパクトな知識が記述されている.どうしてどうして,国家試験を受けるまでの学生のbedsideどころか,実際の専門家にも役立つ知識が一杯ある.
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