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今日,ERCPの基礎実験や臨床成績に関して日本のみならず欧米においても数多くの業績が発表されている.ERCPの技術面では,ほぼ完成された手技として,expertによる挿管率は90%以上に得られている.しかし,ERCP像の読影に関して2つの大きな問題が残されている.1つはいわゆる“early”chronic pancreatitisの診断であり,他は慢性膵炎と膵癌の鑑別診断である.高度の慢性膵炎のERCP診断は周知の如く比較的容易であり,膵病変の存在を疑いなしに指摘しえるものである.そしてこのような進行期の慢性膵炎に対するERCPの役割は単に確診を得ることではなく,病態の正確な把握と治療に関する適切な情報を知ることであろう.一方,軽症膵炎のERCP診断は病理組織学よりみた膵の慢性炎の発症・進展様式から考慮しても十分期待しえるものである,しかし,分枝膵管の変化は膵が加齢の影響を少なからず受ける臓器であることより,必ずしも慢性炎の初期変化と断定できない.現在,この点を含んで膵管像と組織学的変化の関連が膵臓病研究会の慢性膵炎小委員会を中心に検討されている.
ERCP像のみの読影診断は慢性膵炎と膵癌の鑑別にしばしば困難を伴う.通常,両者の最も簡単な鑑別方法は膵癌では病変部―狭窄・拡張や閉塞など―までの乳頭側膵管は正常もしくは尾側に比して極く軽度であるが,慢性膵炎では膵全体の膵管像にびまん性の変化をみる点であろう.しかし,この鑑別点は常に完壁でなく,進行した膵癌ではびまん性の膵管変化が観察される.また膵癌は通常慢性炎を随伴し,膵癌膵管像の詳しい組織学的対比によると,膵管のX線変化がしばしば随伴性膵炎によるものであることが知られている.
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