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編集後記
高田 洋
pp.118
発行日 1978年1月25日
Published Date 1978/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107206
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最近におけるX線並びに内視鏡診断の進歩は著しく,微細病変の診断能も向上し,さらに生検の普及により微小胃癌の発見症例の報告も次第に数多くなっている.こうした事実は胃癌の診断学の進歩として高く評価されてよい.しかし一方,癌がより早期に診断され切除されるため,癌の発育進展,換言すれば胃癌の一生のうちのある長い期間を同一症例において観察出来る例は特殊な場合を除いては少なくなって来つつあり,今後ますますその傾向は強くなると思われる.したがって現在こそ胃癌の発育進展の問題を,推定の域から脱して正確な資料にうらづけられた実例によって判断し検討するための残された僅かなチャンスと考えられる.
本号では胃癌の経時的な粘膜変化を幾つかのパターンに分けて症例が提示されたが,しかしこれだけで,異なった個体に発生し種々な進展を示す胃癌の発育経過の全てが解明されたわけではない.さらに間隔を短縮し観察期間を延長すればさらに違ったコースが見られるかも知れない.胃癌の発育経過のうちさらに早期の粘膜像の変化,polypectomyやbiopsyを駆使してのminute cancerの動向,ポリープ・潰瘍・異型上皮巣の癌化の問題,スキルスの発育経過など胃癌の発生並びに発育,さらに癌の生物学的特性や生体例の諸因子など癌の発育に関連した多くの要因の解明も今後に残された問題である.
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