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編集後記
高田 洋
pp.397
発行日 1970年3月25日
Published Date 1970/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403111239
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昨今,各地の研究会や症例検討会で普通の癌とは違った様相を呈する症例に出くわす場合,その鑑別診断上,必ず加えられる項目のうちに胃肉腫とreactive lymphoreticular hyperplasiaがある.本号のテーマとして胃肉腫がとりあげられたのも,症例数は少ないながらも複雑な病像を呈する本症を術前に正確に診断しようとする願いからである.熊倉・春日井・信田・佐野博士らによる綜説は,それぞれの立場から従来の難解な病型分類を整理され,胃肉腫の有する癌と違ったパターンを明快に呈示され,かつ本症診断の可能性を示唆された点は大変心強く感ずる次第である.経験例が少ないだけに,読者にとっても教えられるところ,大であろう.
症例報告においても,小さなⅡaに合併したとはいえⅡbを術前に診断したもの(氏家),潰瘍を合併しない診断の難しい1cm以下の小さいⅡc(小野),集検で発見した小さいⅡa(伊藤)などの早期胃癌症例の報告は,改めて読者のファイトを呼びおこさずにはおかないであろう.また珍しく,シカゴ大学からの報告を頂いたが,米国における胃癌診断の現況を知るにつけてもわが国における診断水準の高さを再認識すると共に一層の努力を期待するものである.石山,小鶴両氏の症例も興味深い.
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