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編集後記
熊倉 賢二
pp.253
発行日 1976年2月25日
Published Date 1976/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107104
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小腸疾患は,近ごろ学会でもよく話題になるし,本誌でも何回か取り上げられてきた.消化管の診断にたずさわるものなら誰しも“いよいよ本格的に小腸疾患の診断に取り組む番だ”と考えているに違いない.そして,X線検査では二重造影法がルーチン化しつつあるし,小腸ファイバースコープの改良が強力に推進されているから,胃や大腸のように,これから小腸でもめざましい進歩があると期待している向も多いことだろう.この時“小腸疾患の現況”を特集できたことはよろこばしい.本号だけでは小腸疾患をすべて網羅することはできないが,現在のわが国の水準や動向を理解するのに役立つからである.
ところで,小腸には特殊事情があるようである.1つには小腸疾患の頻度が少ないことである.欧米に比べても少ない.胃や大腸のように,各種のX線検査法の利点と欠点とを再検討したうえで小腸のX線検査理論をうちたてても,また,内視鏡のよりよい器種を開発しても,頻度が少ないとなると,症例の集積に時間がかかり,進歩がにぶることになるだろう.その反面,気がつくことは,現在のファイバースコープを使って小腸の病態生理の面で独創的な論文が本誌にも発表されていることである.小腸は暗黒大陸だといわれるのもうなづける.それとともに,いろいろの分野の知識の総合が必要なこともわかってくる.
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