Japanese
English
今月の主題 早期胃癌肉眼分類の再検討
主題
早期胃癌肉眼分類における問題例の提示
Cases Hard to Group into the Coventional Macroscopic Classification of Early Gastric Cancer
佐野 量造
1
,
下田 忠和
1
R. Sano
1
1国立がんセンター病理部
pp.17-24
発行日 1976年1月25日
Published Date 1976/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107067
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巻頭の市川論文でも述べられているように小誌編集委員14名が,肉眼分類の問題点を明らかにする一つの手段として国立がんセンターの早期胃癌100例(連続番号)を読影分類した.方法は1例ずつ切除標本の全体像と部分拡大像をスライドで投影し,早期胃癌の病変部を指示した上で分類した.その中でもとくに分類のバラツキがはなはだしかった症例を提示し,その問題点を指摘したい.
〔第1例〕
患 者:59歳 男
胃角部,小彎を中心として前後壁にまたがる線状潰瘍があり,その中央には深い粘膜欠損(開放性潰瘍)があり,前後壁の部では瘢痕化している.この部の線状潰瘍に集中する粘膜ひだを注意してみると前壁およびそれより連続して小彎側に明らかな浅い粘膜陥凹(Ⅱc)の所見がみられる.しかし他の部の粘膜ひだには異常はみられない.中心の粘膜欠損はその陥凹がかなり目立っておりⅢの所見であり,肉眼的にはⅢ+Ⅱc(片側性)と診断される.この例の14名の委員による集計ではⅢ+Ⅱcとしたものが大部分で71.4%であるが,Ⅱc+Ⅲとしたものが28.5%であった.中心の陥凹をⅢと見なした点には異論はないが,Ⅲ+Ⅱcとするか,Ⅱc+Ⅲとするかについては,Ⅲの部がより目立ち,Ⅱcの部がこれより小範囲のときにはⅢ+Ⅱcとするのが妥当であろう.開放性潰瘍の一側(または片側性)にのみ小範囲に存在する早期癌例は,Ⅲ+Ⅱcであろう.またⅢ+Ⅱcとするか,Ⅱc+Ⅲとするか迷うような例はⅢの占める範囲とⅡcのそれがほぼ等しい場合に生ずる問題である.これについて筆者らは,深かく目立つⅢの方を優先してⅢ+Ⅱcと分類している.この例をⅢ+Ⅱcとするにはあまり問題はなかろう.
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