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編集後記
並木 正義
pp.600
発行日 1984年5月25日
Published Date 1984/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107043
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今月号は主題とその関連座談会を含めて,ヒスタミンH2受容体拮抗薬(以下H2-Bと記す)をめぐる議論が紙幅の多くを占めた.本誌が特定の治療薬剤を取り上げたのは異例のことである.それほどH2-Bは,今やわが国においても非常な関心が持たれている.医学の歴史を眺めると,H2-Bもまたやがてブームが去り,反省期,冷却期という経過をたどっていくのかもしれないが,ここ当分は消化性潰瘍の薬物療法の主役を演じていくであろう.
主題の執筆者,座談会の出席者はいずれも自分の考えを持ち,経験も十分なつわもの揃いであり,読者も読みごたえがあったと思う.ただ,読み終わってみてどのような感想を抱かれたであろうか.ずいぶん良い潰瘍の薬が出たものだと感じた人もいる反面,H2-Bもまた潰瘍症の自然史を変えうる薬ではないのだということを,改めて思い知らされた人も多かろうと思う.潰瘍患者(潰瘍を持った人間)の治療という観点からすれば,いかなる抗潰瘍薬もおのずからその限界と位置づけがある.それを思えばH2-Bの有用性の現状はむしろ当然の結果であり,今後ともあまり期待しすぎるのはどうかと思う.もうこれ以上は言うまい.
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