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Esophageal acid perfusion in coronary artery disease―Induction of myocardial ischemia: Mark H Mellow, Allen G Simpson, Linda Watt, Lawrence Schoolmeester, Oswald L Haye (Gastroenterology 85: 306-312, 1983)
冠動脈疾患(CAD)では酸の食道内腔注入(および,おそらく胃食道逆流;GER)により,安静時の胸痛を生じ,これが心拍と収縮期血圧の積(rate pressure product; RPP)の上昇を招き,心筋虚血を誘発する可能性がある.食道に酸を注入して生ずる心血管系の反応を評価し,CAD患者が酸の灌流によって感ずる自覚症を調査するため,冠動脈造影で確認したCAD25人(平均53歳全例男)と冠動脈正常者12人(平均59歳男11女1)で0.1NHClを食道内腔に注入した.CADでは酸注入で胸痛を生じた者は19名,このうちβ-blockerを投与していない9名ではRPPの有意の上昇が起こり,うち3名に心電図で虚血性変化が出現した.β-blockerを投与した10名ではRPPの上昇は有意でなく心電図変化も生じなかった.CADがあっても酸注入で胸痛を生じなかった者およびCADのない者ではRPPに有意の変化を生じなかった.酸注入により胸痛を感じたCAD患者18名中10名(56%)が,これを通常の虚血性の痛みと感じていた.また,GERの症状(胸やけ,逆流感,嚥下困難)の頻度の高い者では酸注入でとう痛を生じた者が多かったが,逆流症状の頻度が低いものであっても,酸の注入でとう痛を生じた例が多くみられた.CAD患者では,酸注入によって胸痛を生ずる感受性は自覚症状からは予想できないと考えられる.CAD患者では,GERは胸痛を誘発しRPP上昇を招き心筋虚血を生じうる点で通常の胸やけ患者以上の問題となる.これとは別に,酸に敏感な食道から生ずるとう痛が安静時狭心症と誤診されることも考えられる.GERとCADを併せ持つ患者にはとう痛を予防するためにH2拮抗剤などの治療が必要であろう.
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