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書評「早期食道癌の診断」
西 満正
1
1癌研究会附属病院
pp.330
発行日 1989年3月25日
Published Date 1989/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403106418
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驚嘆すべき本
私はこの本を一読して,深いculture shockを受けたと言っても過言ではない.外科医にとって,食道癌と膵臓癌ほど労多くして報われない癌はない.すべての固型癌がかなりよく治るようになったのは,何よりも早期発見の向上によるところが大きい.ところが特に食道癌はリンパ節転移のないもの,ep癌でないと成績がよくない.著者も“sm癌を数多く見つけ出すだけでは,高い救命率が得られないのが食道癌である”と述べている.そしてep癌はもちろん,mm癌でも今まで発見が困難であった.この本はそのep癌の発見を可能にしてくれる本なのである.食道癌の特徴,おもしろさ,不思議さを教えてくれる本である.
総論と各論を取り混ぜて,楽しく頁をめくりながら大事なことの知識が得られる.内容が豊富で美しく,しかもしっかりしていることは驚くばかりである.かんで含めるような実技指導の文も非常にわかりやすい。診断の基本,X線と内視鏡の比較,浸潤範囲や深達度の読み方,鑑別診断,CRの写真,特殊な疾患,食道癌の自然史,統計的・疫学的考察まで含まれている.しかもこのような幅広い総論が,わかりやすい症例から難しい症例へと具体的な症例を順序よく示しながら簡潔に述べてある.特にルゴール染色と直視型パンエンドスコープ,空気量と精密X線検査の重要なことがよくわかる.絶えず胃癌との対比,将来の診断法との対比をしながら話を進めておられるので,非常にわかりやすい.
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