- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
編者も冒頭の第3版の序に述べておられるように,医学は常に進歩し,その進歩は想像を絶する勢いでますます加速され,特に遺伝子組み換え技術の導入により次々に新知見が得られている.内分泌・代謝学においても新しいホルモン,あるいはホルモン様物質,例えば心房性ナトリウム利尿ペプチドとそのファミリー,エンドセリン,およびパラソルモン様物質(PTHrP)など,従来その存在が全く予測されなかったホルモンが次々に発見されている.また,サイトカイン(例えばインターロイキン1)がホルモン作用を有することも明らかにされている.これらの新しく発見されているホルモンは古典的内分泌臓器以外の組織,例えば血管系,骨やリンパ球で産生され,多くはその局所で働くパラクライン作用が明らかにされている.血流を介して働く古典的なホルモンと,この局所で働くホルモンは密接に関係を保ちながら作用していると考えられる.更に情報伝達のメカニズムの研究も目覚ましい勢いで進歩し,各種ホルモンレセプターの構造が解明され,次いで情報伝達物質の細胞内における作用機構も解明されつつある.これらの研究の進歩はホルモン不応症やレセプター病を遺伝子レベルで解明し,今後糖尿病,肥満,高血圧などの成因,病態の解明にも寄与するものと考えられる.今や臨床内分泌・代謝学は古典的内分泌の枠を越えて,確実に境界領域に拡がりつつあり,今後ますます重要な領域になると考えられる.
本書は1979年にNIM iecture seriesの1巻として初版が発刊されて以来,医学生,研修医,および内分泌・代謝の専門医に幅広く利用されている名著である.特に病態生理の理解に重点を置き,最初に基礎知識をわかりやすい図と記述によって理解させ,次いで症状,診断,治療に入る一貫した記述は,臨床医学の新しい方向性を示す画期的な本である.第2版が1985年に,第3版が今回出版され,第2版より116頁ページ数が増えており,内分泌・代謝学領域の進歩を物語るものである.
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.