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書評「イラストレイテッド外科手術―膜の解剖からみた術式のポイント」
大谷 吉秀
1
1慶応義塾大学外科
pp.882
発行日 1994年8月25日
Published Date 1994/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105876
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本書は,術者の目の位置から見た実際の術野の様子を,特に“層(Schicht)”を重視しながらイラスト化しており,これから手術を勉強しようという外科医にとって極めて理解しやすい内容である.通常,手術書というと既に大成し名を遂げた達人が,自らの経験をふんだんに盛り込みながら図解し,説明を加えていくものである.しかし,本書は新進気鋭の外科医である著者が,前立ちの先生に指導を仰ぎながら経験したことをもとに書き上げており,若い外科医の目の高さ,思考過程でまとめられていることが特徴である.
術野の展開には,比較解剖学や人体発生学の知識がときとして必要であるが,本書ではその点にはあまり触れられていない.著者らは,内容を必要最小限にすることで,読者である若手外科医に"手術は難しい"という印象を与えないようにしているのであろう.私どもの大学の先輩,故武見太郎先生は医学概論の講義の中で,"新しい分野の勉強を始めるときには,最も簡単でしかもわかりやすい教科書を本屋で探してきて,徹底的に読んで理解することが肝要である"と話しておられたことを思い出す."simple is the best"といったところであろうか.本書を読んでいると,まるで子どもがプラモデルを組み立てていくように,不思議と手術を淡々と遂行できる気がしてくる.
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