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症例 患者は71歳,男性.高血圧のため近医に通院していた.1日2~3行ほどの軟便が持続するため,精査目的で当科に紹介となった.大腸内視鏡検査では,盲腸に細長く丈の低い隆起を認め,その中央部にわずかに発赤した陥凹を認めた(Fig. 1).肛門側を見るため角度を変えると,腸管肛門側の隆起は結節状であり,そこに向かってひだの引き込みを認めた(Fig. 2).色素内視鏡所見では,辺縁隆起と中心部の陥凹が明瞭となっている.辺縁の隆起は腫瘍性であり,陥凹部分は軽度発赤している(Fig. 3).次に注腸X線検査を行ったところ,二重造影像でBauhin弁の対側のひだ上に軽度の隆起を認めた(Fig. 4).軽い圧迫像では細長い隆起性病変を認める.よく見ると,丈の高い隆起に連続して丈の低い隆起があり,中央部にはわずかなバリウムの溜まりを認める(矢印).隆起の辺縁は不整で,肛門側からわずかなひだのひきつれを認めた(Fig. 5,矢印).強い圧迫像では軽い圧迫像に比べひだのひきつれ(Fig. 6,矢印)が目立ち,隆起の境界が明瞭となった.注腸X線検査では陥凹成分がほとんどない,丈の低い隆起性病変としかとらえられなかったが,内視鏡所見からⅡa+Ⅱc型大腸癌でsm浸潤と考え手術となった.回盲部切除の標本では,37×13mmのⅡc+Ⅱa型と診断した.発赤したやや広い陥凹を認め,陥凹周囲には腫瘍性の隆起を伴っている.腫瘍の辺縁はやや不整で色調は周囲粘膜とほぼ同じである.伸展した状態の固定では陥凹成分が強調されている(Fig. 7).病理組織学的には高分化腺癌であり,わずかに1腺管のみが粘膜下層に浸潤したsm癌で,深達度はsm1であった(Fig. 8,9).
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