レベルアップ講座 診断困難例から消化管診断学のあり方を問う
上行結腸の表面型病変を見逃した1例
多田 正大
1
1京都第一赤十字病院胃腸科
pp.120-122
発行日 1995年1月25日
Published Date 1995/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403105302
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症 例 患者は66歳,男性.自覚症状はなかったが,会社の大腸癌検診で便潜血検査陽性を指摘され,1993年7月に注腸X線検査を受けた.このとき,S状結腸に30mmの隆起性病変を指摘され,外科手術を受けた.この病変はcancer in adenoma(深達度m)であり,手術によって根治できたものと判断された.1993年7月の注腸X線検査(Fig. 1)では,上行結腸にも扁平な隆起性の輪郭がみられるが,このときは看過されていた.また同時期に内視鏡検査も施行されたが,上行結腸病変の存在診断は全くなされなかった.
手術後1年目の1994年7月に行った注腸X線検査で,初めて,上行結腸に異常所見が指摘された(Fig. 2).扁平な病変は前回よりも若干増大していたが,楕円形の腫瘍の辺縁を明瞭にたどることができる.後日行った内視鏡検査でも,周辺粘膜と色調の差がない,表面型病変を確認した(Fig. 3).粘膜切除術によって17×10mmの大きさのⅡa様病変を内視鏡治療したが,病理組織学的にはtubular adenomaであった(Fig. 4a,b).
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