消化管病理基礎講座
肉眼像と組織所見の対比―食道癌
大倉 康男
1
1埼玉県立がんセンター臨床病理部
pp.1191-1199
発行日 2000年8月25日
Published Date 2000/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104852
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はじめに
切除標本の肉眼像と組織所見の対比,切除標本と臨床画像の対比から臨床画像と組織所見とを対応することができ,その結果,病変の拡がり,深達度,組織型などを臨床画像から推定することが可能になる.正確な肉眼診断は治療方針を決定していくうえでも重要である.食道癌は組織型の大部分が扁平上皮癌であり,病変の範囲はヨード染色を用いて比較的正確に判定できる.深達度診断も進行癌がほとんどであった時代には大きな問題ではなかったが,表在癌の発見が増加するにつれてより正確な診断がなされるようになった.そして,侵襲の少ない内視鏡的切除が治療方法の一選択肢となるにいたり,深達度亜分類に基づいたより詳細な肉眼診断が必要とされるようになってきている.
食道癌の肉眼診断を正確なものとするために切除標本の肉眼像と組織所見の対比を行い,基本的な所見の捉え方,読み方について解説した.表在癌を中心としたが,いずれの組織型も扁平上皮癌である.まれな組織型の病変については症例報告として様々な論文が出されていることから,それらを参照されたい,組織所見を見るためには食道正常組織についての理解が必要であるが,解剖書などを見ておいていただきたい.粘膜が重層扁平上皮であること,粘膜上皮と粘膜筋板との間に粘膜固有層があること,粘膜下層に食道固有腺が存在することなどが他の消化管と異なる点である.また,詳細な対比を行うためには切除標本の記録,切り出し方に注意を払う必要があるが,それについては既に本誌で解説したので省略した1).
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