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第87回日本消化器病学会総会は2001年4月18日より3日間,東京(新宿京王プラザホテル)で,二川俊二会長(順天堂大学第2外科)により単独開催された.100年以上の沿革を持つ本学会のしかも21世紀最初の総会でもあることから,その抄録集における会長の巻頭言からも容易にうかがえることではあるが,世界における日本消化器病学会の将来に対する意気込みのようなものが感じられた.3日目のPostgraduate Course(午前:消化器画像診断,治療の最前線,午後;消化器遺伝子診断,治療の最前線)の終了の直後に二川会長による閉会の辞が述べられ,参加者は5,300名を超え,オンライン登録のみにもかかわらず1,000題以上の演題申し込みがあったとのことである.成功裡に終幕したという印象を受けた.
本学会の特徴を振り返ってみると,“組織形態学”と“分子生物学”の最先端と,それらが関連する診断と治療に関わる諸課題がわかりやすく提示されていたと思われる.シンポジウム,パネルディスカッション,ワークショップ,それぞれ9テーマずつが先の観点から企画されていた.更に遺伝子診断・治療・移植医療への深い関心が払われており,特に招待講演およびPostgraduate Courseでそれがうかがわれた.“組織形態学”では,GERD,Helicobacter pylori,Barrett上皮,膵胆道検査法,粘液産生膵腫瘍,炎症性腸疾患とサイトカイン,門脈圧亢進症などの今日的課題が取り上げられていた.参加したセッションを振り返ると,シンポジウム4「肝癌治療の新たな展開(ラジオ波から遺伝子治療・肝移植まで)」では,局所療法としては,主にPEIT,MCT,LMC,RFAなどの比較検討が行われた.“患者さんのほうから最近はラジオ波焼灼療法を要求してくることがある.また病棟に長く残る患者さんはエタノール注入だけだったり…”という司会の小俣政男教授(東京大学消化器内科)の言葉がおもしろかった.治療技術の変遷にはめまぐるしいものがあり,腫瘍の大きさや局在との関連もあるが今後どこに落ち着くのか興味深く拝聴した.肝切除,インターフェロン,electroporation法を用いた遺伝子治療,遺伝子銃免疫遺伝子療法などの発表もあった.
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