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第89回日本消化器病学会総会は2003年4月24日(木)から26日(土)の3日間,藤原研司会長(日本消化器病学会理事長,埼玉医科大学第3内科教授)の下で,さいたまスーパーアリーナ,大宮ソニックシティーなど5会場で開催された.藤原会長が掲げられた会の理念は「新しい医療の創造をめざして」であり,市民公開講座は「肝移植をみつめて」,特別企画として柳田邦男氏と藤原会長の司会により「直面する医療の課題を問うあるべき医療の姿を構築するために」が一般公開で行われ,さらに,「ICD 10消化器疾患の立場から」,「新しい医療技術と生命倫理」の2題が特別企画のテーマとして医療の各立場から論じられた.総会の主題はシンポジウム10題,パネルディスカッション11題,ワークショップ10題,一般演題の講演発表は470題,ポスター244題であり,1,100余りの演題が討議された.これらの中で,主題演題として発表された消化管に関する演題のうち,いくつかを取り上げて紹介する.
第1日目の第1会場において菅野健太郎(自治医科大学消化器内科),浅香正博(北海道大学消化器内科)両教授の司会の下,パネルディスカッション「胃潰瘍の診療ガイドライン」が4,000席収容のさいたまスーパーアリーナ「アリーナホール」で開催されたことは,本パネルに対する会長をはじめとした会員の期待が裏付けられている.このガイドラインは一定の客観的な基準に従って,科学的根拠となる文献情報の収集,分析,評価を行い,日常診療に役立つことを目的とし,Helicobacter pylor(i H. pylori)感染,NSAIDsなど成因による治療選択と,治療法をフローチャートとして視覚化したことが特徴である.パネルでは出血性胃潰瘍に対する各種止血手技のエビデンスが論じられる所から始まり,胃潰瘍の初期治療ではプロトンポンプ阻害薬を中心とした胃酸分泌薬の選択,また,H. pylori除菌療法が潰瘍再発を明らかに抑制すること,治療効果,医療経済的効果からみても有効であることが示された.NSAIDs起因性潰瘍については原因薬剤の中止を行うこと,できない場合は最も治療効果の高いプロスタグランジン製剤かプロトンポンプ阻害薬を使用することが奨励された.問題点として根拠となる論文が欧米でのものが多いこと,保険診療との適合性,さらに日常診療におけるエビデンスとはなにかなどが挙げられ,熱心に討議された.
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