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食道は角化を示さない重層扁平上皮により被覆されている.通常は血液の色調を除けば粘膜面は光沢のある灰白色調を呈している.これは皮膚の重層扁平上皮と異なり,基底層にmelanocyteが存在しないか,あっても極めて少数であり,基底層にメラニン顆粒が認められないことによる.基底層のメラニン顆粒が著しく増加することにより,食道粘膜が黒色調を呈するものをメラノーシス(melanosis)という.内視鏡検査による一般人における頻度は約0.1%程度とされている1).上皮内のmelanocyteから発生する腫瘍が悪性黒色腫である.食道原発悪性黒色腫の頻度は少なく,わが国では食道悪性腫瘍の0.1~0.9%程度と言われている.食道原発悪性黒色腫は下部食道に多く47%,次いで中部37%で,上部は少ない.ほとんどが隆起性腫瘍を形成し,有茎性あるいは亜有茎性のポリープ状の隆起性病変を形成するものが約1/3を占める.潰瘍性病変のみのものは少ない.食道癌と比較して食道壁の硬化は軽度で,壁の可動性がある.上皮内基底層に存在するmelanocyteから発生するため,食道原発の悪性黒色腫の診断のためには上皮内病変,すなわちjunctional activityの存在が必須である.十分な検索をしてもjunctional changeが検出されない場合には,全身の他の部位の悪性黒色腫を除外しないと食道原発の診断は不可能である.悪性黒色腫の周囲粘膜に褐色の色素沈着,すなわちmelanosisを認めることもあり,その存在も食道原発の根拠の1つとして挙げられている.腫瘍細胞の産生するメラニン色素の量により腫瘍の色調は異なりメラニン含量の多い部分は黒色調を呈し,同一の腫瘍でも部位により異なることが多く,組織学的にメラニン産生の認められないamelanoticな腫瘍も存在し,約半数では内視鏡的に黒色調を認識されない.病理組織学的には細胞形態は紡錘型から類上皮型と種々で,多形性を示すが,メラニン色素を確認することで確定診断に至る.
amelanotic melanomaでは,Fontana-Masson染色,S-100蛋白やHMB-45などの比較的特異性の高い抗体を用いた免疫染色が有効である.
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