特集 図説 形態用語の使い方・使われ方
第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語
b.X線・内視鏡所見用語
メネトリエ肥厚(Ménétrier thickening of gastric wall)
磨伊 正義
1
1金沢大学がん研附属病院外科
pp.399
発行日 1996年2月26日
Published Date 1996/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104071
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胃腺増殖による広範な胃粘膜の良性の巨大皺襞は,1888年MénétrierがPolyadénomesen nappeの名称で発表して以来,数多くの症例が報告されている.しかしその組織発生,低蛋白血症の発生機序,癌化などの関連性について多くの未解決の問題を残している.更にこのメネトリエ肥厚を呈する疾患としては上記のgiant hypertrophic gastritis(Ménétrier病)のほかにZollinger-Ellison症候群,スキルス胃癌,悪性リンパ腫,吻合部ポリープ状肥厚性胃炎などが挙げられる.
Ménetrier肥厚の病理組織学的特徴について佐野は(胃疾患の臨床病理,医学書院,1974)胃体部腺粘膜の単純肥大(simple hypertrophy)を来す病変と理解し,Schindlerのhypertrophic glandular gastritisに相当するものであるとしている.多賀須(胃と腸15:531,1980)も佐野の立場を支持し,胃底腺領域でも幽門腺領域でも腺底部には本来の胃底腺が残ったまま腺性肥厚を来しており,通常の萎縮過形成胃炎とは著しく異なることを強調している.筆者らの切除材料の検索でもほとんどすべての症例が,組織学的に腺窩上皮と固有胃腺が本来の比率を保ったまま増生した腺性肥厚性胃炎の所見を呈していることから,本症のほとんどは胃底腺粘膜の腺性肥厚を来す病変と理解している.
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