特集 図説 形態用語の使い方・使われ方
第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語
b.X線・内視鏡所見用語
幽門狭窄(pyloric stenosis)
磨伊 正義
1
1金沢大学がん研附属病院外科
pp.400
発行日 1996年2月26日
Published Date 1996/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104072
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胃の狭小化とは胃の内腔が器質性疾患により狭くなった状態で,胃中下部に発生した多発潰瘍や癌により引き起こされることが多いが,内腔は確保されている.幽門狭窄とは文字どおり,幽門前庭部が狭くなる病変で,しばしば通過障害がみられる状態を言う.胃病変に伴う胃内腔の狭小化,狭窄は,良性疾患では経過の長い反復性の潰瘍や線状潰瘍,多発潰瘍に著明であり,悪性病変ではlinitis plastica型癌や幽門前庭部にみられる進行癌に多い.特に悪性腫瘍に伴う狭小化の場合は,他の胃X線所見と総合すると診断に苦慮することはほとんどない(Fig. 1).良性疾患に対する狭小化に対しては胃の再発性潰瘍および線状潰瘍が多く,これらの患者は臨床経過も長く,愁訴も多いのが通常であり,その形状からその患者の自然史を窺い知ることができる.一方,幽門狭窄は幽門部に発生した癌病変によって引き起こされる悪性の狭窄と,胃幽門部や十二指腸球部の消化性潰瘍による良性の狭窄に分類される.
X線撮影上の注意として,狭窄部位の辺縁が観察できるように充盈像,二重造影像のほか圧迫撮影は必須である.幽門部癌による悪性狭窄の場合は狭窄部の辺縁の不整,硬化が著明で,しばしば陰影欠損がみられる(Fig. 2).十二指腸球部潰瘍による狭窄では直接所見は把握しにくいが,手術症例の検討からほとんどの幽門狭窄の例において活動性潰瘍が同時に認められている(Fig. 3).瘢痕のみによる閉塞はほとんどみられないことから,幽門狭窄を伴う球部潰瘍では活動期の潰瘍の存在を考慮し,即手術ではなく,抗潰瘍薬による保存的治療による経過観察により改善することが多い.
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