特集 消化管癌の深達度診断
序説
再び消化管癌深達度診断をめぐって
多田 正大
1
1多田消化器クリニック
キーワード:
深達度
,
早期癌
,
sm癌浸潤度分類
Keyword:
深達度
,
早期癌
,
sm癌浸潤度分類
pp.240-242
発行日 2001年2月26日
Published Date 2001/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403103144
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消化管癌の深達度診断をめぐる潮流
消化管癌の深達度診断は,われわれにとって永遠の課題である.新しい検査法が開発されるたびに,その深達度診断の指標を求めなければならないし,従来の手段と比較してどこが優れているのか,どのように活用すべきかを検証しなければならない.「胃と腸」が創刊されて35年を経た今,過去に取り上げられた癌診断,特に深達度診断に関する主題を見ると,先人たちがいかに苦労してきたかがうかがえる.そして21世紀を迎えた今でも,この命題は新鮮な課題である.本号で再び深達度診断を取り上げるにあたって,いっそうその思いが強くなる.
20世紀におけるこの方面での歴史を顧みる企画は,本誌第35巻13号において展開されたばかりである.したがってここで再びそれを論じるつもりはないが,それにしても「胃と腸」が創刊されたころ,内視鏡検査はまだ胃カメラが主流であった時代であり,X線診断が唯一頼れる診断法であった.先人たちはX線フイルムを舐めるように観て,ひだの一本一本の状態,陥凹の形状,壁の変形を看破して診断学を確立してきた.このころの胃カメラ診断と言えば,制限されたコマ中に胃内腔がうまく撮影されているように願いながら検査を行い,後日,現像されたフイルムが擦り切れるほど熱中して読影した時代であった.いかにX線に近づくことができるか,それが内視鏡の課題であった.今であれば“超音波内視鏡を行えば一発で…”と言いたいところであるが,現在の若い消化器病医には想像も及ばない蝸牛の歩みを当時は繰り返していた.その徒労とも言える努力の蓄積が,今日の消化管癌診断理論を完成させたのであった.
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