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初心者講座 胃X線検査のポイント―私の精密検査法
2.精密検査のピットホール
Detailed Radiological Examination of the Stomach
中野 浩
1
Hiroshi Nakano
1
1藤田学園保健衛生大学消化器内科
pp.350-351
発行日 1991年3月25日
Published Date 1991/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403102499
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このテーマを引き受けてから何を書いたらよいか困ってしまった.本来,精密検査には落とし穴はあってはならないし,落ちてはならない.ここでは失敗症例を挙げて教訓めいたことを書く羽目になってしまった.
〔症例1〕58歳,男性.Fig. 1の後壁二重造影像では幽門前底部大彎側の矢印の所に不整形の微小バリウム斑があり,微小癌と診断される.胃体上部後壁にも粘膜ひだ集中を伴う病変がある.幽門部の周辺隆起を伴う微小陥凹からは生検で癌の所見が得られ,微小癌と胃体部の潰瘍瘢痕の診断で胃切除術が施行された.Fig. 2の切除標本では矢印の所に長径5mmの微小癌がある.断端部付近の胃体部後壁には集中する粘膜ひだの“やせ”が全周性に追えるⅡcがある.口側断端owは辛うじてマイナスであった.この切除線近くのⅡCは悪性サイクルを経過した病変で,最初大きな活動性潰瘍のあった時期の生検で癌細胞が認められなかったので,つい油断して胃潰瘍と診断してしまった.“はやとちり”で一度良性と思い込んでしまうとなかなか診断を変えることができない.常に冷静な目でX線所見を読影することが大切である.そして,絶えず多発病変の有無にも注意を払う必要があることは言うまでもない.
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