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好酸球性消化管疾患(eosinophilic gastrointestinal disorders ; EGID)は消化管に好酸球が浸潤する慢性炎症性アレルギー疾患の総称である.EGIDは好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis ; EoE),好酸球性胃腸炎(eosinophilic gastroenteritis ; EGE),好酸球性大腸炎(eosinophilic colitis ; EC)に分けられる.EGIDは「胃と腸」誌において,本号で初めて主題として取り上げられた.EoEは,本邦ではFurutaらにより2006年に初めて報告されている.本症は,早期胃癌研究会では2010年2月に丸山ら(藤枝市立総合病院)によって初めて症例が提示され,「胃と腸」46巻10号(2011年)に掲載された.その症例は「早期胃癌研究会2010年最優秀症例賞」を獲得している.その後,同様の症例が散見されるようになり,筆者らの施設でも2010年に初めて診断して以来,3年間で17例を経験した(友松論文).
EoEは正常では好酸球がみられない食道粘膜に発生し,EGEあるいはECは少数の好酸球が存在する胃・腸にみられる.本邦のEoEの診断指針(案)は厚生労働省班会議(2010年)で報告され,EGEの診断指針(案)は2012年に報告されている.いずれも,生検において20/HPF以上の好酸球浸潤が存在し,生検を数か所で行うことが必要とされる.診断指針(案)をまとめた木下らは本号にてその作成経緯と今後に改訂すべき問題点をまとめている.石川論文はTalleyらの基準により診断されたEGE 19例を同診断指針(案)と対比している.病理学的に好酸球が浸潤する疾患としては,EGIDの他に,食道では胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease ; GERD),膠原病など,胃・腸では好酸球増多症候群(hypereosinophilic syndrome ; HES),NSAIDs腸炎,潰瘍性大腸炎などがある.平橋論文はEoE疑い12例とEGE疑い5例を用い,これらの疾患との病理学的な差を述べている.すなわち,EoEでは上皮内に高度の好酸球浸潤がみられ,特に上皮表層に優位にみられることや,これらの所見が下部食道だけでなく,中部・上部食道にもみられるとしている.一方,胃,特に前庭部では,成人でも20/HPF以上の好酸球浸潤が正常でも認めることがあるとしたうえで,EGEでは腺窩上皮内への好酸球浸潤を認めることなどが特徴としている.阿部論文ではEoEとGERDとの鑑別について臨床的・病理学的な差について述べ,その中で,米国のガイドライン〔ACG(American College of Gastroenterology)clinical guideline〕にて,プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor ; PPI)により症状や組織所見が改善する食道好酸球浸潤はPPI-REE(PPI-responsive esophageal eosinophilia)として狭義のEoEと区別することが必要であるとされていることを強調している.また,末梢血の好酸球数が1,500/μl以上を示す好酸球増多症候群について,森山論文が紹介している.そして,本症候群とEGIDとの詳細な鑑別が,現在のところ十分にされていないと述べている.
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