今月の主題 消化器診療のcontroversy
肝疾患
肝炎に薬物療法は必要か?
板倉 勝
1
1東海大学附属東京病院・内科
pp.262-264
発行日 1990年2月10日
Published Date 1990/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402909489
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
●肝炎治療の目的
ウイルス性肝炎は,現在,その定義,成因,病理組織学的な病型が確立され,血液生化学的な所見—いわゆる肝機能検査成績—なども加味されて,その臨床像は把握が容易になっている.しかし,その治療については多くのcontroversyがある.ウイルス性慢性肝炎の持続とその進展には肝炎ウイルスの持続感染が必須の条件であることが明らかになり,この持続感染に終止符を打つことが慢性肝炎の根本的な治療に他ならないことから,インターフェロンをはじめとする抗ウイルス剤に期待が寄せられている.また,ウイルスの排除に当たっては宿主の免疫反応の関与が大であるところから,いわゆる免疫調節剤の投与も試みられている.しかし,このような治療法は適応症例が限られており,適応症例に使用したとしてもその効果は十分とはいい難いのが現状である.
その結果,多くの症例では根本的治療を行うことができないまま経過を追い,血液生化学的検査成績を指標に病状の推移を観察せざるを得ない.そして,一部の症例ではこのような経過をたどるうちに非可逆的な肝組織の荒廃—肝硬変—に至る場合もある.
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.