私の経験例
薬物性肝炎
川崎 森郎
1
1札幌鉄道病院第1内科
pp.2147
発行日 1977年12月5日
Published Date 1977/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207621
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患者は46歳の主婦で,全身倦怠を主訴として来院した.家族歴に異常なく,既往歴では42歳でやはり全身倦怠があり,某医により黄疸を指摘されるも通院のみで軽快,44歳で不定の胃腸症状のため当科入院,内臓下垂のみで肝機能検査は正常であった.現病歴は約1カ月前に感冒様症状あり,某医で肝機能異常を認められ入院,軽快したが退院時に膀胱炎が出現したので投薬を受けた.しかし,全身倦怠感が強くなり当科へ入院した.37.7℃の発熱があり,黄疸を認め,GOT 500以上,GPT 450であった.HB抗原(-).安静と一般肝庇護を行ったが,1週間後にGOT 43,GPT 45と著明に改善され黄疸も消失した.膀胱炎には入院後にカネンドマイシンの注射を6日間つづけて治癒した.さらに1週間後に肝生検を行ったが,prolonged hepatitisという診断で,慢性肝炎とみるよりは急性肝炎の再燃と思われるという返事であった.その後は運動負荷によってもGOT,GPTの上昇はみられず,外来的に経過を追うことにした.
退院後1カ月して残尿感,排尿痛のため来院,尿所見に乏しかったがウイントマイロン9錠を投与,1週間服用するも軽快せず,GOT 27,GPT 20と変化なく,泌尿器科を受診し慢性尿道膀胱炎として投薬をうけたが,悪寒戦慄,発熱,嘔気,嘔吐が出現し,1週間後再度当科に入院した.自覚症状が強く黄疸を認め,GOT 530以上,GPT 446以上であった.
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