内科医のためのリスクマネジメント—医事紛争からのフィードバック・3
薬剤添付文書の重要性
長野 展久
1,2
1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科司法医学
2東京海上メディカルサービス
pp.1064-1067
発行日 2002年6月10日
Published Date 2002/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402908758
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薬剤関連事故
日常診療で使い慣れているはずのありふれた薬剤であっても,その投与量,投与回数,投与方法,コメディカルへの指示方法,そして患者へ説明するときの注意事項などをめぐって,思わぬ医事紛争へと発展することがあります.例えば,消化管出血をきたした患者の内服薬指示箋に,担当医師は「トロンビン1V(バイアル)」と記載して経口投与の指示を出したつもりなのに,コミュニケーションが不十分で担当看護師は「トロンビンi.v.」すなわちトロンビンを静脈注射する指示と勘違いし,「禁静注」であるトロンビンが静脈内投与されて不幸にも患者が死亡したというようなケースさえあります.
薬剤投与にあたっては,医師や看護師は医療のプロであって間違えるはずはない,いつも基準通り適切に使用されるはずだ,と世間の誰もが認識しています.そのため,ひとたび薬剤に関連した患者の死亡・重度後遺障害残存という結果につながると,担当医師は厳しくその責任を問われることになります.
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